星野源「そして生活はつづく」「働く男」文庫版

こんにちは。う つ ん です。

今年の抱負で転職したいなあというのがあって年末に転職サイトに登録している職務経歴書をガッと更新して、ばばーん「駐在」〜〜〜!!これでエージェント爆釣れやで〜〜〜!と思っていたら、いただけるメールが外国人リクルーターからの英語メールばかりになって脊髄反射的に返信できず、あわあわしております。あと転職サイト上にはCVを載せたけど、Wordファイルとしては更新してない、っていうかWordというソフトを持ってないので、Google Doc or Office Onlineで成形しつつ作り直ししなきゃいかんなあ…と腰が重くなっております。

他方、今年は孤独は寂しいけどやむを得ない場合は楽しむ、というコンセプトでしっかり本を読みたいなあと思ってて、昨年もまぁまぁ読んでたんですが秋ぐちに10ページも読んだら睡魔に必ず襲われて休日を台無しにする本に出会ってしまい急速にペースが落ちてしまった。積んで次行けばいいんだけど、内容的に読んでおきたい本ではあったので今も格闘してます。約480ページの本で現在地点は290ページ…あと2ヶ月は掛かりそう…(ちなみに人から借りてる本ですw)

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 本題 is "私は星野源に降伏すべきなのか?問題"

 昨年10月から始まった大ヒットドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」は、最終的に私の心の平穏を奪い去り、11月途中くらいからは平日毎日そそくさと帰宅しては追いかけ配信されているドラマの前の回を何度も見直し、「あーくっそ、星野源かよ」とエンドレス舌打ちを鳴らし続ける生活が続きました。

元々、私は「逃げるは恥だが役に立つ」の原作者の大ファンで、これはもうファン歴20年という筋金入りでして、その件もblog書こうと思ったんだけどキモさを消臭しきれなくてまだ寝かしてあるというレベル。そこに、元々サブカル女の敵とささやかれていた星野源がドラマ版主役としてあてがわれたわけで、発表されたその日に妹から「ご愁傷様」というLINEが来ました(マジです)。

公式SNSもめっちゃ盛り上がりましたよね…オフショットな…この画像は死んだ!俺死んだ!て思ったyo...ふぅ 

 

そうはいっても、それはそれ、これはこれで、私はなんのこれしきのことで星野源に陥落して良いのか悪いのか…?自宅をくるくると一人で歩き回って熟考した結果、音楽はとりあえず置いといて、より人柄にダイレクトに触れやすい以下の2点につき検討しようということになったのです。

 

オールナイトニッポンてクズ専用番組じゃなかったんや…っ 」

星野源氏は ―かつて私が中学生くらいのころに福山雅治がエロトークで一世を風靡していた― 25時からの月曜一部を担当されていて、その枠というのは私が長年クズの拠り所として信仰している西川貴教がANN本体を降板したとき最後に担当した枠であり、そして春風亭昇太に奪われた…その月曜一部なのであります。神聖な場所。

ラジオは…面白かった。思った以上に女性の投稿がたくさん読まれ、ANNらしいクズ味で、でもクズじゃない味もあり、いや西川ちゃん時代だってクズでない放送もたくさんあったんだけど、それでもそれ以上に、星野氏がすごく真面目に俳優業をやっていて、茶化せない絶対領域を守りながらラジオをしている感じがあり、そして彼自身への仕事への姿勢は至って謙虚で、努力家で…それは、とにかく(比較して申し訳ないけどそれしか対照がないんじゃ)西川貴教と大きく違わないシュッとした殊勝な芸能人の姿勢にほかならないんだけど、私はどうしてか、クズの末席として、なんだか居心地の悪い気持ちになってしまって、これなんなん?わしの年齢?構成作家の違い?時代?星野源西川貴教の違い?なんなん?と混乱した。

星野源氏のこと、好きにならずに済めばよいと思いながら、彼が凄く気持ちよく清々しくクズで、自分のダメさ加減を下から舐めてくれるようなアカンレベルであり、そしてそのまま堕落するように好きになれてしまえば、それはそれでいいと思ってたのかもしれない。でも違った。彼はまじめな人だな、と。一言に集約すればそういう感想。

 

手慰みに読むようなエッセイをまじめな人が書くっていうこと

普段の自分だったらこのラジオの時点で、「まじめか!」と思ってシャットダウンしてしまうところだったんだけど、私は当時労働観的に結構病んでいて、まあいまも低空飛行ですが、真面目であってその真面目さときれいにベクトルを合わせて努力をしていける人の素性に興味を持った。

私はネット上では自分のクズさを最大限に拡大して、むしろクズでありたいと思っているけど、実生活では真面目というか、生真面目というか、うん生真面目が近い表現かな、その生真面目であることを短所として指摘されがちな空回りちゃんなんですね。そのくせ重い腰を上げて清々しく努力できない。真面目なくせに、なんやかんや言い訳をしてサボろうとする。生真面目が、それをドライブにして努力したら最強なんじゃないかって薄々思ってたんだけど、どうもやれない。でも星野源氏ってもしやそのパターンの人なんじゃないの?と思って、本を読んでみることにした。

私の持論、"しゃべり"と"文章"ではあぶり出される性格が少し違うということ。得意不得意あるし、前者はぶっつけで言葉を綴るが後者は推敲できる。私は喋り下手で文章で書いたほうがより自分の本質に近いものが出せるタイプなので、彼を違う確度から見てみようということで本を手に取った。

まず読んだのは、処女エッセイ本「そして生活はつづく」文庫版。Kindleで買えたから。

 

そして生活はつづく (文春文庫)
星野 源
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感想は至ってシンプル。「あーこの人ばかだ!」て。ひどい!w

自身ならフタをして実行に至らないようなくだらない発想、行動が、じゃんじゃん表に出てくる。失礼を承知で、というか、少し前の自分だったら当時の彼のような人を「浅い人」といういい方で馬鹿にするかもしれないけど、いま名実ともにおばさんである私は、あほな発想や行動を実行できてしまうその"行動力"こそ、生真面目ちゃんには無い最強の才能の一つであることを知っている。

星野氏も、特に少年時代は真剣に病んでた時代があり、仕事を始めてからもストレスがひどい時期があったと述べているので"浅い"と言ってしまったらそれこそ失礼千万なのだが、そうはいってもその上でこの本にあるような軽率な行動をしつつ、そしてまっすぐに「やりたいことやるんじゃー」と行動してきたのだとしたら、まぶしいくらい凄い。やはり成功、成果の背後には行動力がつねにあり、才能やら"深さ"(浅さの対極として)なんて二の次だなあと思う。

 

私「バンジー飛んで人生観変えられるなら飛んでみたい」

先の本は、星野氏の人生の重要な岐路であるくも膜下出血による活動休止の前に出版されたものなので、私は彼が病気を経てどんなふうな考え方を新たに持つようになったのかに興味が湧いた。

それで買ったのが次作「働く男」文庫版。単行本は病気の前に出版されたが、文庫化にあたりafter病気の星野さんが加筆をしている。実際この本は、ポパイで連載されていた映画評だったり、音楽や俳優業のセルフライナーノーツ、縁の人のインタビューや又吉直樹先生(←)との対談で構成されていて、星野源好きが読む前提のファンブック的要素の強い本だったのですが、この本のまえがきの破壊力がやばくて読み始めて3ページで決壊した。

 

はじめに

働きたくない。

(中略)

働かないで済むのなら、仕事をせず、ずっと遊んでいたい。行ったことのない国へ行き、会ったことのない人に会って話をしたい。読んだことのない本を読み、漫画を読み、まだ聴いたことのない音楽に触れたい。

映画も観に行きたい。(中略)夜中ふと街に出て、遊んでそうな友人に連絡し、合流したい。どうでもいい話をして、お腹がよじれるほど笑い、そこにたまたまいた可愛い女の子と仲良くなり、こっそり自宅に連れ込み、朝までイチャつきたい。ベッド・インしてからコンドームがないことに気づき、どうするか悩んだ挙句急いでコンビニで買ってきて、半裸で待ってくれていた女の子に笑いながら迎えられたい。

働きたくない。

昔は違った。

働き続けることが自分のアイデンティティだった。

星野源「働く男」文春文庫 p3-4から引用)

 

がーん!これって、ここのまえがきに書いてあるちょっとクズっぽい今の俺って、人類全員が平等に持っている価値観じゃないのか〜!死にかけた結果として手に入れた価値観がこれかよ〜〜!て。

でも一方で思う、自分だって同じようにサボりたい気持ちMaxでやってきつつも、嫌だ嫌だと思い苦しみつつも、働くことしかできなくて、それをアイデンティティと呼びたくはなかったけど働くことだけを、ただそれだけをしていて、よく言えば真っ直ぐで、生真面目で、だけど好きだろうが嫌いだろうが働く一択しかなくて、サボりたい私の気持ちは概念以上のものではない、表に具現化していない私だった。

 

サボりたい、遊びたい、働きたくないとボヤきながら、実は自分は今も忙しく働いている。しかし前とは比べ物にならないほど、心は落ち着き、楽しく、幸福であり、仕事も充実している。 

星野源「働く男」文春文庫 p6から引用)

 

この一段落が、うらやましくて、うらやましくて、落涙までいかなかったけど目のたたえる涙の量がだいぶやばかったことは認めざるをえない。

星野氏は、よくあるクズと同じ働きたくない価値観を共有しつつも、働くことにも幸せを感じているのでそこは真面目に取り組むことができ、結果的にクズと真面目のミックス具合が絶妙であるからして、大成功した著名人の一人となったのである。

よく私は、もうこのクソのような人生の人生観を変えたいからバンジー飛びたい、茨城県の竜神湖にある高さ100m、お値段15kのやばいバンジー飛びたい、と言っているのですが、星野氏がくも膜下出血で活動休止を余儀なくされたことはとても気の毒に感じますが、その上でもやはり、もし死ぬほど怖いこと経験して人生観変えられるならバンジー飛びたい直ぐ飛びたい!!そんな気持ちです。

いや、お前、それ以前に今その手に取ったその本を心の栄養とし、いま速やかに己の心を整え直し、実直に幸福に生きようよ!!って話か。あはは。

 

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で、結局あなた堕ちたんですか?この男に

実は時を同じくして逃げ恥の主題歌の「恋」のCDを購入したんです、これだけ流行ったし、記念だなと思って。あと彼の音楽についてもちゃんと聴いた上でやんや言うべきだなと思ったので。で、買って、聴いて、予算いっぱいついてそうだな、と思って…すうっと彼の生霊のようなものが私からいなくなりましたでよ。簡単に言うと、彼の音楽は私の好きな音楽とちょっと違ったから。彼のライブに行かなくても生きていける!と思ったら、憑き物が落ちた。

もともとギター弾き語り男子が好きで、そういう意味では彼の音も多分好きで、このシングルも宅録の「雨音」や、少し絞った編成の「Continues」は好きと思ったけど、表題曲の「恋」の超絶がやがやなのを聴いて、私は星野源の音楽に囚われない!!と確信したら、なんかすーっとね。

音を好きになると音楽家との距離感を見失っていろいろ気持ち悪いことになるのが私の常なのですが、音と距離感を持てた上で本やらラジオやら…と積み上げていくと、そこにいる彼も冷静に見ることが出来た。そうすると、本にはいろいろと人生の教訓があり、くだらない話があり、私には必要のないインフォメーションがあり、本が彼自身を投影したドロッとした秘め事ではなくて、文字の集合であり情報だな、となった。

まあ、ただ私、彼のような色白のしょうゆ顔が好きみたいでね…そういう意味では、巻頭のカラーピンナップが一番毒ですわ。あんまり見ないようにします。