シンガーソングライター(1)

坂本真綾ツアーミツバチの最終公演、カウントダウンライブの熱狂を通過して、演者の捌けたステージの上に新アルバムの発売と春のツアーの告知が流れたとき、ライブの熱でショート気味だった私の回路はしんと平熱を取り戻した。

シンガーソングライター かぁ

シンガーソングライター【初回限定盤】

シンガーソングライター【初回限定盤】

 坂本真綾、初の全作詞曲。一部ではコーラス編曲も!いままでにリリース済の自作曲2曲(everywhere、誓い)に新曲8曲を加えた全10曲。編曲陣としては、河野伸(Driving in the silenceプロデュースやライブバンマスなどで活躍)・渡辺善太郎(真綾お気に入りの”カザミドリ"編曲他)が参加…と。

 

「シンガーソングライター」ってタイトルって、大きく出たなあと私は思ったんですね。世の中にそういう職業看板引っさげて生きている人がそれなりにいて、そこに新規参入していくイメージですよね。すでに歌手として大きな実績があって、でもそのなかの”自作率”ってたしかにそこまで高くなかった。ここ数年、自分で制作(デモを聞いて、選んで。または、曲を外に発注したり)をしていったなかで、作りたい・作ろうっていう境地に至るのは極めて自然なんだけど、あーそんな「SSW」なんて大きな看板かけちゃうんだなーって。その看板に見合う作品、本当に聴かせてくれるのかなーって。

なんか冷静になっちゃって。嬉しかったんだけど、ぐっと距離はかりました。全部なにもかも真綾だから100%ラブ、なんてありえないなーって。だって私、音楽が好きだもん。真綾じゃなくて、音楽が好きだもん。

 

好きな音楽が、シンガーソングライターの身からこぼれ落ちたドモホルンリンクルであればこそ、個と個の対峙みたいになって、底まで潜って同化する。

だからこの3月のリリースっていうのは、信じられないくらい真綾ともういちど出会って没入するチャンスになるか、もしかしたらそうでなくて距離をおく結果になるか、そういう博打の要素のある転換点になる気がしている。

 

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女性シンガーソングライターといえば、彼女、という話をしたいと思う。

著名な人でぱっと思い浮かべると、ユーミン、矢野顕子、竹内まりや、中島みゆき、ミドルで坂本美雨、若い子だとYUIとかmiwaを思い浮かべる。

シンガーソングライターと聞き手のマッチングというのは完全に相性になると思う。特に女性は自身の性格や主張や経験が色濃く反映されてくるイメージがある。まあユーミンなんかはショートショート読んだみたいなすっきり通過していく曲もあるんだけど、SSWの魅力は「この曲はどんな材料をごった煮したんですか!白雪姫の毒りんごですか!!」みたいな取り憑かれるような曲に出逢えるってところにあると思う。

 

そこで完全に個人の趣味に成りますが、私は取り憑かれましたただしあなたが取り憑かれるかは知りません保証しません、でもいい曲ですよ。というのを紹介して、私のmusic shelfがどんだけSSWに占拠されてきたかを今更語ってみようと思う。

そして同時にこれからSSWとしてのキャリアを本格的に積むらしい坂本真綾氏に対し、「いままで自分が歌ってきた音楽を似せるだけでは看板倒れになってしまうのよ。自分自身から搾り出した曲を期待していますよ」という思いを表明したいです。

 

遠藤響子 "一人が好き" from 月の光 〜Clair de Lune〜

月の光 ~Clair de Lune~

月の光 ~Clair de Lune~

 2年と少し前に菅野よう子さんが出るってんでのこのこ付いていったらライブで拝見した遠藤響子さんの女性目線には本当に撃ちぬかれました。他にも「バカみたい」「ありがとうが言えない」「誰だって魔法が好き」などタイトルだけで取り憑かれてしまう曲が沢山ある。 菅野よう子小倉博和山木秀夫など名だたるサポートを立てられるだけのキャリアもさることながら、「深い海みたいな愛情の海」の村田陽一さんのTb.は卒倒する。自分の”女性”がこれからどこに行ってしまうのか不安になるくらいの強烈な音楽。

 

川村結花 "朝焼けの歌"

Yuka Kawamura Best”Works”

Yuka Kawamura Best”Works”

 

川村結花好きといって、実は近しい人から何度か否定されたことがあって、ぬああ、と思っていたのですが、まあやっぱり戻ってきたら好きだし体型にあった椅子のような音楽だと思う今日この頃。

近年は自身のリリース活動よりも楽曲提供を中心に活動されていて、まぁそもそも世間的には「夜空ノムコウ」の作曲者なのでSSWという認知よりは作曲家なのかもしれませんが、なぜか近作でも補作詞を積極的にされていて、つまりデモの段階で多少歌詞ついた状態で売り込んでいるのかな…wとか余計な詮索をしつつ…。ちょうど1年前にライブを拝見したとき、しゃべるように呼吸するように簡単に弾いて、生きるようにまるで難しく歌う姿がかつてと変わらず、やっぱり女性SSWなんだとしみじみ感じました。もともと大阪のおばちゃんみたいな人でしたが、いぶし銀です。まじで。

貼った動画は以前も紹介した気がしないでもない、chemistry堂珍きゅんとのデュエットです。ピアノ一本シリーズなので音数が少ないが、曲調も暗い!最終的に救われるのか、救われないのか、ぎりぎりのコード進行・メロディラインなのがたまらないです。ファンモンの「あとひとつ」の作曲者でもあります。

 

つるうちはな "YOU"

つるうちはな

つるうちはな

私の中ではヤングSSWカテゴリーに入ってくるのですが、昨年12月にU sus Uのライブ観に行ったときに対バンで彼女が歌っていまして、これも撃ちぬかれました。生命体としておよそ歌とピアノ弾きで出来上がっており、楽曲が命の切り分けそのものであるなあと思わせる人でした。「でれんのサマソニ?!」からのし上がってサマソニ出演&受賞歴もあるとのことで、これからの活躍がとても楽しみであります。

先に紹介した遠藤響子川村結花がすでに成熟した大人の女性で、すでに得た経験や結論をもとに自世界を構築しているように感じるのに対し、若いつるうちさんは”現在進行形で煮込み中であって色はその時々によって様々”と思わせる、はかなさ、というとちょっと違うんだろうけど、とにかくパンクなんだけどうつろいやすい、気まぐれなところが芸術として嫌味なく昇華されているところに高い価値があると思うのです。

 

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また同じような紹介をやりたいなあと思いますが、いまはCoccoの「カウントダウン」を聞きながら書いております。彼女もれっきとしたシンガーソングライター。楽譜読めずともインディー盤で「SING A SONG - No Music, No life」を産み出し、「カウントダウン」と「遺書。」なる問題作で鮮烈メジャーデビューです。あの頃は私ラジオっこでして、NHK-FMミュージックスクエアを毎日聞いていましたが、初めて聴いたとき卒倒したのを昨日のように覚えてます。当時は小室ファミリーとバンドブームが爆売れ音楽界を2分しており、その下にロキノン厨御用達バンドなどなどが居た流れですからね。今思ってもとんでもない話だな、冒険し過ぎだな、自分がレーベル責任者だったら全然GOサインだす勇気ないな、と。まあこっこは、ちゃんと売れましたけどね、時流だよなーと思います。

Cocco椎名林檎SHUUBI、都築恵理、はやしいと松崎ナオ、より子、白鳥マイカ、秋山羊子…(たぶん認知順)

秋山羊子さんは自分へのフィードバックがきつくてしばらく聴けなくなっちゃって、その間アルバムが2枚も出ているんだけど、いつか買わないと完売してしまうぞー!と自分に言い聞かせている。