在外J-Popおばさんが2016年の音楽エクスペリエンスを書くよ

こんにちは、在外J-Popおばさんこと、う つ ん、です。半角スペースが2個入っております。今は日本にいます。

海外に住んでみたら海外の音楽に詳しくなるのかな〜、UKprogやGerman metalとかに超詳しくなって常に黒いTシャツ着ることになるのかな〜とか思って暮らしていましたがそんなことにはならず、J-Popおばさんの純潔を高貴に保っております。具体的にいうと、UKに住んでいた3ヶ月間で唯一たった1枚購入したCDはBABYMETALの1枚めのアルバムBABYMETALでした。

このアルバムのEU圏盤はボーナストラックにRoad of Resistanceが入っているんですけど、この曲を聴いてこんな泣きメロ+HRなのやってるなんて聴いてないよ〜!好きー!!てなりました。

youtu.be

世間様の波に乗ってアイドルめく - BABYMETAL at London Wembley Arena

私のJ-Pop情報の入手源っていうてもtwitterのフォロイーからの情報、音楽ナタリーとかRO69とかOTOTOYのニュース欄とか結構いいかげんだし、じゃあアンテナ広げていこうぜってしらみつぶしに調べるほどマメでもないし、今年の11月までドイツ国内は著作権管理団体GEMA(←ドイツにおけるJASRACみたいなもの)とYoutubeが著作権使用料に関して法廷の内外で争っており、有名無名巻き込んで世界のいろんな音楽、特にオフィシャルMVやライブ映像がブロックの対象となり、日本のメジャーレーベルも例外でなく、日本からのアクセスかのように偽装して接続しないとまともにYoutube見れなかったんですよね。

prw.kyodonews.jp

まあそんなわけで、2016年は元々好きだった人を追いかける形でJ-Pop活動をしていたのですが、結果的にすごくアイドルめきました。

前述のBABYMETALはきつねDAYこと4月1日に2ndアルバムMETAL RESISTANCEをリリースして翌4月2日にロンドンのWebmleyアリーナでワンマンライブをしました。このアリーナは日本で言うと横浜アリーナみたいな感じの箱で、音楽用ホールではないのでライブ用の稼働は地場UKのアーティストであっても月数回という感じなのですが、このキャパ12000人の巨大会場で結果的には日本人初めてのワンマンライブをしたグループとなりました。すこし前に予定されていたX JAPANのライブがPATAさんの病気によって延期になってしまったので。

で、日本のサブカル層にBABYMETALが浸透しているのを横目で見ながら、私はまぁアイドルだしメタルだしIDZ!とかちょっとよくわかんないしスルーかな!と思ってそれまで聴いてもいなかったくせにロンドンに住んだ記念として買ったUK盤のRoad of Resistanceに見事一本釣りされ、結果的には4月2日、もうロンドンには住んでなくてドイツに引っ越したあとだったのにわざわざUKまでライブを見に行きましたw

ドイツの私の住んでいる街からロンドンまでの交通費はだいたい、東京-新大阪の新幹線くらい。ロンドンでの宿泊代はピンきりですが移動だけなら大したことないんですね。

f:id:takemyhands:20160402182947j:plain当日は雨で大分寒くてテロ対策のためクロークもなくて苦労しましたが超楽しかった!

物販に並んでいるのは日本から来たお客さんも多く、日本人:他=1:1くらいだったのですが、フロアになだれ込んでみると日本人率は10%以下。白人のデブなおっさんが娘の歳以下くらいの彼女らに向かって拳を振り上げて下手な日本語で"よんよん"等叫んでいるの萌えましたね。物販に何時間も並んだので周囲の人と喋ってたのですが、イギリス人以外にもEU圏全体からお客さんが集まっていて、その後ツアーもあるのにわざわざロンドンまで(わしも含め)見に来ていたわけで、彼女らの愛されの深さに打たれました。

ライブのほうは、前半にポップな曲を固めてくるセトリが神がかっており、特にCatch me if you can、Doki Doki MorningからMeta太郎を経て4の歌という流れがね!4の歌ちょう好き…!!周りみんなシャウトしていましたが、日本語発音できる優越感半端なかった!w いいね!いいね!とかま〜だだよ!とかドキドキモーニン!とかよんよん!とか。合いの手の文化をワールドワイドで体現するのめちゃ楽しいです。。。

 

彼女らの仕事に対し本当にメタルなのかという議論はわかる。UKでも、確かアルバム発売時雑誌3誌で表紙を飾りながら、彼女らを扱わないメタル誌もあった。私は彼女らのライブを見て、正直音楽的にどうっていうのは分からなかった。メロディだけ切り取ったらメタルじゃなくて、メタルの伴奏をつけてるからメタルになっているわけで。ユーロビートとかパラパラとかダブっぽい要素もあるしね。

だから私は彼女らを、主軸はアイドルとして凄く完成したShowbizと受け取ったんだけど、メタルを入り口にしたことで日本のアイドル文化が海外で好意的に受け取られているのはとても感動的な瞬間でした。日本にいるときと何ら変わらないテンションで皆で踊って声出して合いの手入れて楽しめる!あっこれ世界共通なんだ、って。

このWembleyでのライブが楽しすぎて、その後のワールドツアーのドイツはケルン公演にも行ったんですけど、小さい箱で演者が近くに見えた反面、演出はあまり派手ではなく照明効果と紙芝居もちょっとだけで、ライブも短かったのは残念だったな。しかし若いので無理せず、じっくりあの独自文化を育てていって欲しいと思うのです。

 

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照井順政(てるいよしまさ)、活動範囲がスパークする

しかし私個人的に2016年ただひたすら熱かったのは、ハイスイノナサのブレーン、照井順政氏と仲間たちが手掛けたあれこれです。

ハイスイノナサはジャンル的にはポストロックと言われることが多いようなのですが照井氏はそれを否定するように作風を融解させていて、私の感覚としては最早音楽である以上の言葉による定義が不明、或るいはライブを見ると「ごめんなさい命だけは取らないでください!!」っていいたくなる音楽、みたいな感じですが、ライブは以下のような感じ。


アニさん(※照井兄こと照井淳政氏)やせててかっこE

 前記動画にも出演しているハイスイノナサのボーカル、鎌野愛さんがバンドを抜けてしまったこと、そしてそのラストライブに立ち会えなかったことは今年の悲しみの一つですが、鎌野さんは別のユニットで精力的に活躍中なので機会を見つけて必ず見に行きたい注目ボーカリストの一人。anoh(アノー)というユニット名は、照井順政氏が大好きな"ア◯ルがあるな"が由来であるとかないとか…

で、そんな照井さんワークスの一つが、楽曲派最注目アイドルsora tob sakana、そしてインディー(じゃなくなった?)ロックバンドsiraphであります。

sora tob sakana 1st album "sora tob sakana"

2016年7月26日に発売されたこのアルバム、先日行われたアイドル楽曲大賞のアルバム部門でダントツの得点で1位となり、本当にこれ単純にJ-Popとして最高やろって、本当にただそれだけなのですが、 BABYMETALで挙げたジャンルの融合がカワイイとメタルであるとすれば、sora tob sakana(通称オサカナ)が成し遂げた融合って、【未完成な思春期の女の子】×【ごめんなさい命だけは取らないでください!っていう音楽】の融合であり、明らかに半熟な成長途上の女子たちにガッツガツに何本も首取られる感覚がものすごくヤミツキになるのです。11月の一時帰国時に定期公演行ったのですが、アルバム再現公演ということで曲順もそのままに全部演奏してくれてとても嬉しかった…☆

当該公演ではないのですが、別の定期公演から、私の一番お気に入りの曲「まぶしい」を是非聴いてあげてください!↓↓ Apple musicにも上がってるのでフルで聞けますよ。

生歌は完璧というわけではないのですが必要にして十分、定期公演で使われている恵比寿CreAtoは背面にLED大型ディスプレイが既設になっていて、プロジェクターではなくLEDの高S/N比でVJを流してくれるのでライブの臨場感が段違いです。下北沢ShelterとかQueみたいな床ベタベタのタバコくさい箱で育ってきた私からしたら、未来かー!て。なります。

彼女らのtwitterとblogをなるべく追いかけているのですが、変にアイドルっぽい媚びというか、作っている感じがなくて、本当に等身大の中高生がひたむきに努力している姿が伝わってきてとても好感度が高い。化粧も薄いし衣装もシンプルだし。これが歳を重ねて売れて予算も出来て…てなったらどうなるのかわかりませんが、彼女らにはよくあるアイドル像をなぞるのではなく新境地を開くことでオーディエンスを満足させる方向に歩んでいってほしいなと思うので、そして音楽的には明らかに新境地を開いてしまったので、17年、メンバーの内3/4が高校生となりぐっと大人びる年、どんなふうに進化し、どんな2ndアルバムが出てきてしまうのか?!超たのしみにしてます。

そして個人的には、あんまり演者にプレッシャーかけんようにしよう…と思いながらもどうしても期待してしまうのが、オサカナが生バンドを率いてライブをする日です。上にあげた「広告の街」ってなんかもう無理じゃないですか。これあれでしょ、どーせ深夜に宅録でフレーズごとに録って録って切って貼って重ねただけでしょ…って 弾 い て る ー !どーん!みたいな…語彙がなくて申し訳ないんですけど変態の総合芸術ですよね。

youtu.beこれ演奏と歌とダンスを同時にやったら目と耳のやりどころに困って同じ曲3回やってもらわなきゃいけなくなるやつ
 

siraph - "siraph" "current mood Vol.1&2" and "quiet squall"

そして照井順政ワークスの2016年双翼のもうひとつが今年デビューしたインディーロックバンsiraphです。実際はこのバンドを語るのに照井氏だけをフィーチャーするのは正しくないので、ちゃんと書きますと、
このバンドは、個人や同人ユニットbinariaLantis所属アニソン歌手などとして活躍しているAnnabelさん、彼女のLantisでの2枚めのフルアルバムに曲提供をしたゆかりで集まったGu.照井順政、Key.蓮尾理之(ex. School Food Punishment, ジェッジジョンソン等)を中心として、同じくex.sfpのBa.山崎英明、Dr.山下賢(Mop of Headなど)の5人で結成されました。元々はドラマーを入れ替えつつ、オリジナル曲とAnnabelさんのソロ曲をごにょごにょするAnnabelバンドとして活動してたのですが、16年の4月くらいにsiraphと看板を変え、同人販路でcurrent mood vol.1(soundcloud)を発売しました。

その後に正式な"1枚目"として発売されたセルフタイトルドの"siraph"はタワーレコードAmazonに販路を限って発売したとのことですが結構話題になっていたような気がします…どうでしょうね。色眼鏡ですかね。

soundcloud.com

私は彼らの活動に本当に深く敬意を払っているのですが、とにかく、こんな大好きなメンバーが集まってバンドを結成してくれたことだけで神がかってるのに、siraphTVというYoutube上での生放送イベントを不定期に開催してくれて2016年だけでその回数10回!要は、ドイツにいようがどこにいようが、彼らのライブとトークと楽しい遊びを観覧することが出来たのです。

ニコ生などWeb上で配信を行ってプロモーションしていくというのはアイドル、同人などで一般化しつつありますが、ガチプロのガチ演奏(VJ付き)をタダで見れてしまうというのはなんというか…日本の現地にはお客さん入れられてましたけど経理的に大丈夫なのかしらん…銭を投げたほうがいいのではないのか…?!などとあたふたしないこともない。

11月に奇跡が起きて出張一時帰国時に彼らのちゃんとしたていでの初ワンマンライブに参加できたのですが、全然初めてって言う感じがしなかった。Annabelバンドのライブをよく見ていたからというのもあるけど、siraphTVでバンドの仲とか空気感とか曲の演奏の出来上がりの推移とかをつぶさに見てたからだと思う。インターネッツすごい、Tech距離を超えます〜〜!というお話。

 

siraph
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私はとにかく芸事の人たちにはいつも実験をしていてほしいなという思いがある。音楽も実験的なものが好き。上手にジャンルの枠にはまらなかったり、(良い意味で)はァ?って思うアレンジだったりバカテクだったり、バカテクじゃなくて王道なのに何か新しかったり…道なき道を行く人がかっこいい。その道なき道の行き方が、音作りだけじゃなくて、活動の仕方にまでにじみ出ているのがsiraphの姿だなあと。

その後、彼らはTVアニメBloodivoresのED曲"quiet squall"をアニソンやアニメ・映画などを扱うメジャーレーベルであるNBCユニバーサルからリリースするのですが宣伝などマイペースそのもので、傍からみたらレーベルから放置されているように見えなくもないw アニメなどに使っていただくのは歓迎としてもマイペースにその時どきの音楽を制作していくのじゃ!という姿勢なのかなと勝手に想像している。

youtu.be

この"quiet squall"、前作を引いてガツガツロックかつ超絶技巧的演奏…と想像して聴くとびっくり、表題曲はメロウで超おしゃれ。ジャケ写のごとく色を当てはめるならグレー×ベージュみたいな。大人です。頭ちょんまげにしてユニクロのくたびれたどピンクのパーカーとか着たまま聞いたらAnnabelさんにぶん殴られるかも知んない!着替えてから聴こうね。

 

彼らのこういった、移り気な音が良いです。盤によって色が違う。その時どきの気分をきれいに切り取っている。コンポーザーである蓮尾ちゃんとてるりん(照井さん)の振れ幅も、右の変態と左の変態という感じで振り切っているもののまた心地よく、Annabelさんはどまんなかにどしーんと安定した歌声で美しくてぶれない。

なんとなく、彼らならいつまでも遊び続けてくれるんじゃないか、簡単にやめちゃったりしないで、ずっと制作したり放送したりライブしたり、いろんなマグニチュードでその時の気分を時候の挨拶のように届けてくれるんじゃないかと期待してしまう。

ああどうぞ来年もよろしくお願いします、コンポーザー二人いるんだから2枚組フルアルバムを年イチで作れるよね?ね?(言う方は超勝手

 

quiet squall(TVアニメ(Bloodivores)ED主題歌)

なんともならない

超久しぶりにblogに戻ってきた。何か書き散らかしたくなったのだ。

前回の更新から213日も経っててうわって思ったけど(7ヶ月やん)、正直その間、人様にご報告するような何かがあったかといえば、特にない!ていうか人のためになるようなことをウェブで書ける人って凄いよ!アルファツイッタラーとかさ。凄いよ!

この7ヶ月やっていたこと/やっていなかったこと

英語

DMM英会話のおためし授業を受けた後これはなかなか良いものだなと思ったものの、生活の不規則さ(出張が多い)からwebレッスンが全く習慣化せず。ただ仕事で毎日喋ってるので上達はしている気がする。私は元々文法はそれなりにOKで絶望的な語彙力のなさと英語の苦手意識が直結しているので、英単語をやろうということで、いま高校生に大人気(らしい)のmikanという英単語テストアプリをやっている。

英単語アプリ mikan

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センター試験レベルのは流石にさくさくと終わり、いまはTOEFL向け単語テストを気が向いたときに受けている。英単語に対し4択で訳語が出てきて選択する。つまり1単語に対し原則1つの訳語なので応用は効かないが、自分のような暗記が目的でなくなるべく英単語に暴露したいというぬるま湯英語話者からすると 、ああこんな言葉もあったな、という感じで参考になる。用例紹介もあり、リンクをクリックするとweblio辞書に飛ぶというカワイイ仕様…(いいのか?)

まださすがに全く見たことも聴いたこともない単語には出会わないが、正答率は順調に落ちてきて、TOEFL向けRank8で正答率9割くらい。…トホホ情けない。

良い子はこの程度の英語力でも海外駐在余裕でなれるよ!って覚えておこう。

色々行きました。強迫観念的に無理やり出かけようとしていた感も否めず旅疲れしていたような気もします。

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ノルウェー西部の港町ベルゲンの山の上からの風景。フィヨルドに囲まれて贔屓目に言ってちょうきれい

ただまあ確実に言えることは、駐在などの時間限定で渡航している人は多少無理をしてでもいろいろ出かけるべきだとは思います。いまは冬で日も短くてテンションも上がらないので引きこもりがちですが、ドイツの都市部にいると、ヨーロッパ全域ほとんど飛行機で2時間以内とかでいけちゃうので、後から後悔するより行動するよろしと思います。

最近考えていること

とにかくこのインターネット村においては、どこにいようが日本にいるようなものです。今も日本契約のapple music聴きながらこれを書いているし、Amazon prime videoで映画を見たり、Kindleで日本の本や漫画を読み、スマホでニュースに精通し、結局は自分のメーン言語のあれこれに触れることに忙しく、それらを完全に断ち切って現地化するのは難しいことだなと思います。

特に私なんてドイツ語も学習せず、英語も半端でゴリ押ししているので、現地人脈を築いていくことはほぼ不可能。いや、自分では、スクールにも通わずにDHLのおにーちゃんやパン屋さんとはギリギリ意思疎通しているから自分偉いやんとかちょっと思ってるよ!鉄道のアナウンスがだんだん何言ってるか分かるようになってきて感動したもん。

 

生活の中で、その時々で、BBCやイギリスのテレビを見たり、いろいろ技を駆使してオリンピックを見たり、今は10月からやってるドラマ #逃げ恥 に夢中だったり、とにかくネットを通じて飛び込める文化に思い切り浸かりながら過ごしているけど、それはせっかくの海外生活なのに…と考えたら、ノイズ…なのか?

自分の中で、たとえば自分の手元からアクセスできちゃう日本文化と、現地文化・時事と、私の大好きなイギリスのあれこれがあって、どういうプライオリティで自分を晒していくのか?というと、結局今は日本が1位にある。かんたんに繋がれてしまうから。ネットがなかったら、日々の日本語読書(←そんな読んでないけど)やツイッター時間の埋め合わせに英語の本やドイツ語の勉強を充てるかもしれないし、全く違う暮らし方がありえるかもしれないけど、結局私の心は日本にいるまま。

そんなもんかなーと思う。

たまに、あかんあかん、と思って、情報化の海からあがって旅行とかに行く。それですこし現地に浸ると満足して、また心を日本に戻しても良いこととする。その繰り返し。

私の暮らしの目的は、海外にいることじゃないんだな。

今ここにいることは仕事のキャリアパスの延長線上にあるってだけであり、別に私は海外に出てきたくてしょうがなくて今こうしているわけじゃないんだな、と。

だから、手に入れられるものはなんでも手に入れていくべきと思うけどそれは”持ち帰る”ためだなあと。スキルも思い出も物品も、持ち帰るために手に入れているのだなあと。

それを「勿体無いと思うべき」という考え方もあるかもしれないけど、私は、"帰る人"なんだなあと。

f:id:takemyhands:20161126081323j:plain自宅の近所のクリスマスマーケットにて。かわいい小物がたくさん見つかる。

英語というツールの先に(2) - 海外生活blog

 前回に引き続き英語の話をしますが、私は引き続きドイツに住んでいます。

 

起承転結のないだらだらコンテンツ

  1. 駐在女子といういきもの(のカテゴリーにやっぱり入らなかった) ←前々回
  2. 英語というツールの先にあったもの ←前回+本稿
  3. これから

2-2. 英語というツールの先にあったもの(2) - 私達のお勉強の終点

目標の英語力を得た先になにがあるのか

英語力を測る国際的な尺度の一つにCEFR (Common European Framework of Reference for Languages: Learning, teaching, assessment)というものがあります。(参考リンク:

資格・検定試験CEFRとの対照表|資格・検定試験 関連情報[英語4技能試験情報サイト]

こんくらい英語ができたら"B1"とか”C1"とか決められていて、イギリスで外国人が大学に入学するために必要とされるIELTS6.0とかっていうのはだいたいB2、普通に英語話者として就職するための目安とされるケンブリッジ英検CAE取得がC1あたりになります。

私は昨年末から今年の頭にかけての3ヶ月間、イギリスはロンドンで語学学校に通っていたのですが、入学時のクラスがB2、卒業前にひとつクラスが上がってC1で卒業(というか修了)しました。ちなみにIELTSとかケンブリッジ英検受験コースではなくて、一般英語のコースです。

C1のクラスというのは当時、そこの語学学校の最高レベルのクラスで、クラスメイトはEU人、南米人、ハイソ系韓国人といった構成で、私は自分自身の英語力をクラスでダントツ最低だと思って日々ストレスを貯めつつも、自分をC1に放り込みやがった語学学校の先生の意図、自分の何を見ているのかを観察しようとちょっと必死になっていました。

 

語学学校の教師は、出身国別で生徒の英語力の傾向、性格の傾向などを掴んでいるもので、イタリア人の発音はやばい、フランス語系アフリカ人の発音もやばい、EU圏の人はマシンガントークできても文法が終わってる、日本人は文法が完璧で語彙も豊富なくせに全然クラスでしゃべらない、など。

日韓の生徒は、激しい受験戦争のためか概ね良好な文法力をもって語学留学に臨んでいると見られていて、かつ、韓国人は自己表現に優れているので発話も良い。しかし日本人は全然しゃべらない。日本人にクラスで発言させることが、教師の腕の見せ所などと言っている先生も居ました。

なぜ日本人は英語をしゃべらないのか?私が出会った先生たちはそれを「恥ずかしがっているからだ」と考えていて、「Don't be shy! とりあえずこの件について自分の意見を述べよ」と言ってくるのです。

 

私もご多分に漏れず授業中会話にカットインすることが本当に難しくて苦労しました。文化圏によっては、人が喋っているところに堂々割り込みをすることが別に無礼ではないとされているところが多く、延々と続く卓球のラリーを首を左右に振りながらただ眺めるだけの時間を過ごしたりもしました。

「しゃべりなんて文法的に正しい必要ないんだから、過去形も現在形も複数形もなんでも適当でいいからとにかく中身を喋って!」

確かに当初は、自分がしゃべりたいことを脳内で逡巡して、カチッとした文章が出てきてから口にだすようなところもあったと思うのですが、だんだん慣れてきて喋ってる途中に文が途切れても「Erm...(あ〜‥)」と言って繋いでおけばOKなどと理解できてくるのですが、やはり発話量がクラスメイトより足りないことは明白なのでした。

 

「節子…!これ英語力やない、性格や…!!」

 

目の前で繰り広げられる議論において、あえて自らバトンを奪いに行ってまで自分の意見を表明しなくてもいっか、みたいな。学級会でも会議でも、めんどくさいところで当てられると気まずいから目を伏せているような、そういう場面で、インターナショナルクラスメイトたちはむしろ奪い合うように発話権というボールを追い回し、ボールを手に入れた暁には"デートアプリで恋人探しをするのは有りか、無しか"等の、3秒冷静になるとどうでもいいような議題(先生が設定)にたいして熱っぽく自説を展開するのです。

英語力が!C1相当でも!国際的な人間関係の中でプレゼンスを発揮するには!この!バトンを!ボールを!奪いに行って!自説を展開する!やる気!スイッチ!ONが必要!!

英語だけじゃだめじゃん!!!

 

そう、仲間と同調し、多数派に合流し、突飛な意見を飲み下し、常に民主主義がつつがなく執行されることを是として義務教育を通過してきた私達にとって、外国人の中で存在感を発揮しながら自分の意見を述べ、賛成されたり反対されたりしながら揉まれていくことは、なかなかにして難しいのです。

英語ができるだけじゃだめなのでした。英語のその先には、日本の義務教育文化が育んだ自分の性格をデストロイ&リビルドするという儀式が、必要だったのです。

 

そして私はある日意を決して、"最低の元カレの話"等のプライベート、政治信条、宗教観、自分のパーソナリティ・フルご開陳という、怪しい茂みに迷い込んでいったのです。

 

ロンドンの先のドイツに 〜 英語が身に馴染んだあとの世界

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TRANSPORT MUSEUM of LONDONの特別展示"Night Tube"の広告ポスター。
深夜地下鉄、ドライバーとの労働条件の折り合いつかず実現してないのにしたたかにも堂々と展示

 

私はそうして無事、語学学校という怪しい茂みを英語力C1程度という嘘認定証とともに抜け出し、仕事のためドイツに引っ越してきました。

ドイツ人は公称、約40%は英語話者とされ、確かに仕事をしていて大卒・院卒・博士タイトル持ちなどと渡り合っているとその英語はほぼ完璧なのですが、日々の生活、スーパーの店員さん、洋服を売ってくれる人、バスの運転手さんに英語が通じるかというのはケースバイケースであり、日常生活ではガンガンにドイツ語で話しかけられるし英語でどうにかしようとするにもそれはそれで押していく勇気がいります。

私のようなヘタレの日本人は、通じるかわからないドイツ人に英語で特攻するよりは、ちまちまとNHKラジオ講座の初級ドイツ語を学習し、自らドイツ語を習得したほうが気が楽だなんて思いつつ、特に勉強もしないわけです。

 

私はロンドンでの語学学校生活をとても気に入っていて、結果的にはとても満足していて、韓国人やフランス人のクラスメイトと英語でカフェでだべっている、それができている自分にも満足していたし、もちろん英語力があきらかにどこか欠けているんだけど、目先必要なことは事足りているような気がして、ある高みに上り詰めたような気がしていたのです。

私は製造業のエンジニアで、ドイツで仕事を始めてからは毎日オフィスで英語のメールを読み書きし、取引先と英語で面談するし、週に1、2回は英語で外部と電話会議(電話会議は音声の質も悪いし顔も見えないので結構難しい部類の英会話です)もするし、それができているし、だから英語はじゅうぶんにできているのだと思ってのほほんとしていました。

 

そんなころ、私はロンドン在住の会社の同僚(ドイツ人)とパリで落ち合って、5日間の旅行をともにしました。彼女とはずっと英語で会話をします。そして気づくのです。"Sooooo frustrated! Words don't come!!!" 言葉が出てこないのです。

 

仕事ばっかりやっていて、最低の元カレの話も、日本人の心に神が居ない話も、J-popがダサいはなしも、タイタニックが糞映画であるという話も、なにもしてこなかったから!言葉が出てこない。

覚えたはずの単語の引き出しがあかない。スラスラつなげられていた文章がつながらない。茹で過ぎたうどんみたいに、ぶちっぶちっと、美しい、スラスラの英語が途切れ、無様な断片となる・・・

 

英語の筋肉は落ちます(断言)

TOEIC990点という屋号を掲げている人が、いつごろから990点になってそれをどれくらい継続し、直近いつ試験を受けたのか?ということがふと気になることが有りますが、言われればあたりまえですが英語というのは一度習得しても忘れます。

しかも、肉じゃがのレシピを忘れたからググッて補完しよう、みたいなふうに簡単に外部リソースで補いきれないのが、英語を忘れることの一番のショックポイントです。文章を読んでいて忘れちゃった単語が出てきた時にはまた調べればよいのですが、自発的に喋っているときは単語やフレーズが自分の"モノ"になっていないかぎりは絶対に出てきません。

 

つまり、英語というツールを獲得した!と思っても、その先には、忘却との戦いがあるのです。

 

私は獲得した英語力を"努力"によって維持しなければならないとは言いたくないのですが、いずれにせよ何しかの形で英語のインプット(読む、聴く)とアウトプット(しゃべり)は継続的にこなしていかないと、ハリボテの成績であればあるほど、即くずれる砂の城です。

 

私はドイツ渡航後、仕事以外の場面で英語を話す機会が激減しており、それをなんとかイギリスのテレビ試聴、新聞読みなどで補っていこうとしていました。しかし、何をか言わんや、冒頭の通り、私は生来の性格からして言葉が出せない系日本人なわけです。英語力だけでなく、その性格面も徐々に、徐々に帰国の途をたどっており、友人と二人で部屋でくつろいでいても、くだらなければくだらない話であるほと口をついて出てこず、「まぁその件はいちいち言わなくてもいっか」みたいな、あうんの呼吸狙い・黙る日本人、のキャラクターを踏襲し、ドイツ人から見事寡黙キャラの称号を得るわけです。

 

英語がそこそこできるようになりました → 日本人の性格じゃあ英語話者になじめない! → なんとか頑張って自己表現して仲間に入れました → 仲間との別れ・ドイツ渡航 → 自己表現の機会も、英語を話す機会も減少 → また自分の英語力に悩むはめに。

 

これが、私が英語力獲得の先に見つけた次の土地です。

 

つぎ、「これから」というタイトルで何かを書くことを予告しているのですが、私は今日仕事中に必死でDMM英会話の広告を読み漁っていましたよ…私のこれからを助けてくれるのかを見極めるために…ぐぬぬ

もしどうにもならなかったら、坂本真綾の「これから」という曲の歌詞を書いて、本シリーズを終わろうと思います #適当